プラスチックゴミの何が問題?イラストで解説【簡単に減らす方法3つ】

プラスチックゴミを減らす方法のイラスト

7月からレジ袋が有料化になりました。その大きな目的のひとつは「プラスチックゴミの削減」です。
ゴミが減るのはいいことです。でも、そもそもプラスチックゴミの何が問題なのでしょうか?

わたしはもともとプラごみ問題に関心があり、あれこれ調べてきました。自分の復習も兼ね、まとめてみます。

「プラスチック」は1種類の材料の名前じゃない

「プラスチック」は、熱や圧力を加えることで望む形にできる「塑性(そせい:plasticity)」をもっている合成樹脂の総称です。塑性というのは、ある個体物質を押したり引っぱったりして形を変えたとき、加えた力を取り除いても、元に戻らずに形が変わったままでいる性質のことです。
つまり、「プラスチック」という一種類の材料があるわけではなく、さまざまな種類のプラスチックがあるわけです。

ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ウレタン、メラミン、ナイロン、アクリル、ポリエステル。

よく耳にするのはこのあたりだと思います。もちろん、ほかにもたくさんの種類があります。

プラスチックってどんな物質なの?その特徴は?

素材と特徴

プラスチックの原材料は、おもに石油、天然ガス、石炭などの化石資源です。((最近は、トウモロコシやサトウキビといった生物資源(バイオマス資源)からも作られます。))

世界でもっとも広く使われている材料のひとつで、たいへん実用性にすぐれています。軽くて、丈夫で、自由に形を変えることができます。腐ったり錆びたりすることがなく、耐水性・耐熱性・耐薬品性をもたせたり、電気を通さなくしたりすることもできます。そして、とても安価です。

この革新的といってもいい素材は、いまでこそ悪の根源のように扱われていますが、プラスチック製品が開発されるようになった当初は「環境に優しい素材」として注目されていました。

その理由はふたつあります。ひとつは、それまで装飾品の材料として使われていた象牙やウミガメの甲羅の代用とすることで、生きものを殺さずにすむこと。もうひとつは、廃棄物になるしかなかった製油所からの副産物を、プラスチックペレットとして利用できるという、廃棄物の有効活用です。

また、飲料ボトルを重いガラスから軽量のプラスチックボトルに変えることで輸送時のCO₂排出量が減らせたり、食品包装にプラスチックを使用することで消費期限を伸ばし、食品ロスを減らせたりします。

その特徴が自然界では仇に

ところが、プラスチックが自然界に入ると、この素晴らしい性能が仇となってしまいます。その特性ゆえに、生物に分解されれません。自然に還ることができないのです。

プラスチックゴミの大きな問題のひとつは、この

「完全に分解されることはない」

ということです。

より細かく砕かれていき、たとえ人間の眼には見えなくなっても、消えることはありません。
つまり、これまでに生産されたプラスチックのほぼ全てが、いまも存在し蓄積し続けているというわけです。
その場所は埋立地であったり海の中であったりさまざまですが、プラスチックゴミの多くは、陸上で発生しても最終的に海に到達します。

5mm以下の小さなマイクロプラスチックと、さらに小さなナノプラスチック

「マイクロプラスチック」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。「マイクロプラスチックは」5mm以下の小さなプラスチックのことです。

マイクロプラスチックは、最初から小さく作られたもの(1次プラスチック)と、もともとは5mmより大きかったものが紫外線や波などの影響で劣化し、細かく砕けたもの(2次プラスチック)があります。

さらに小さなナノプラスチックも存在すると考えられています。こちらは小さすぎて、現在の技術ではどのくらい存在するのかは調べられていません。

プラスチックが海に流れ出るまで

今日、世界中の海面に浮かぶマイクロプラスチックは、控えめにみても5兆個より多く、それは銀河系の星の数より多いそうです。数が大きすぎて、もはやイメージできません(笑)

世界中どこを探しても、プラスチックの見つからない海はおそらくもう存在しない。海のどこにプラスチックがあるのかと質問するのはナンセンスで、プラスチックのない海はまだあるのかと疑問を投げかけるべきだ。

引用:海洋プラスチック汚染: 「プラなし」博士,ごみを語る

海のプラスチック汚染について調査研究を進めている、海洋研究開発機構(JAMSTEC ジャムステック)の研究員・中嶋亮太博士は著書の中でこのように書いています。

でも、プラスチックがどうして海に到達するの?
海の近くに住んでいるならまだしも、都会で暮らしているとイメージしにくいです。

その経路は大きく分けて3つあります。

風にとばされる

ひとつめは、風に飛ばされて海にたどり着くルートです。風が強い日に、ビニール袋が宙を舞っているのを見たことがあると思います。また、ゴミ箱から溢れたペットボトル、カラスが破ってしまったゴミ袋、そこからこぼれ出たプラスチックの容器などの一部が、風に飛ばされたり雨に流されたりして海へたどりつきます。

ほかに、日本ではあまりないですが、途上国ではゴミ収集車に屋根がついていなかったり、ごみ捨て場にカバーやフェンスがなかったりします。嵐がくると簡単に海にへと流れてしまいます。

ポイ捨て

ふたつめは、ポイ捨てです。海辺や川辺でのポイ捨てはもちろん、道路へのポイ捨ても風や雨などに流されて海へ。あまり意識されないポイ捨てプラスチックとして、チューンガム(ベースにプラスチックが使用)、たばこ(フィルターにプラスチックが使用)、式典などで飛ばされる風船などもあります。

また、漁網が海にポイ捨てされることも多いそうです。もちろん禁止された行為ですが、違法操業を隠すため、違法でなくても漁網を捨てて空いたスペースに魚をたくさん積むほうが儲かる、破れた漁網を陸に持ち帰って処分したり修理したりするよりも捨てるほうが安くすむ、などの理由から捨ててしまうとか。

生活排水や屋外での劣化

食器洗いや掃除用スポンジのちぎれカス、化繊の服を洗濯するとでる合成繊維、スクラブ剤や歯磨き粉にふくまれるマイクロビーズ、香り付き柔軟剤に入っているマイクロカプセル、磨耗した洗濯バサミ、 車のタイヤや靴底が削れてでるカス、道路にプリントしてある標識、農業で使うビニールシートやネット、建物の塗装が剥がれたものなど。

これらは、生活する上で不本意ながらでてしまうプラスチックです。

プラスチックが海に流れ出るとどうなる?

生きものへの影響

海に流れでたプラスチックは、生きものが間違えて食べてしまうことがあります。すると、消化器官を傷つけたり、プラスチックに含まれる化学物質が体に影響を与えたりします。また、海底のサンゴに覆いかぶさって傷つけたり窒息させたりしてしまう、軽くて流れやすいプラスチックに生きものがくっついて漂流し、本来は生息しない場所に外来種を運んでしまう、病原菌を広めてしまうなどの問題もあります。

有毒物質の流出・吸着

プラスチックを製造するとき、用途にあわせて様々な化学薬品を添加します。プラスチックが海に流れでると、この化学物質が海中に溶けだしたり、あるいは、海中に残留している有害物質をスポンジのように吸着したりします。この汚染されたプラスチックを生きものが食べてしまうことで汚染物質が食物連鎖の中に入り込み、海の生きものだけでない広い生態系を脅かしています。その生態系の中に、もちろん人間も含まれています。

人体への影響

プラスチックを食べた生きものを人間が食べてしまった場合、どうなるのでしょうか?
プラスチックそのものは体外に排出されるそうですが、人間の研究はまだ進んでおらず、添加された化学物質の影響などについてはよくわかっていません。

一方で動物の研究は進んでおり、その一例としてアカアシミズナギドリという海鳥の研究結果があります。
プラスチックを多く食べてしまったアカアシミズナギドリは血中のカルシウム濃度が下がっていました。血中のカルシウムが減ると、骨やくちばしが弱くなり、卵の殻が薄くなります。その結果、孵化する前に外的に襲われるなどして、個体数が減ってしまいます。

「それなら、シーフードを食べないようにすれば安心」
そう思うかもしれませんが、プラスチックは水道水だけでなく販売されているボトルの水からも((出典:水道水からも検出:マイクロプラ問題を考える/オルタナ))、海塩からも検出されています((出典:9割の食塩からマイクロプラスチックを検出/ナショナルジオグラフィック))。

回収は不可能

海に流れ出てしまったプラスチックをすべて回収することは、もう不可能です。ほとんどのプラスチックは海底深くに沈んでしまっているため技術的に難しく、広大な海をくまなく探すことなどできないからです。また、ゴミの回収には莫大な費用・時間・労力が必要です。

「網目の細かいネットですくい取ってみてはどうだろう?」と思うかもしれません。
5mm以下のマイクロプラスチックは、海の中でプランクトンや魚の卵と一緒にただよっています。目の細かいネットはプランクトンで目詰まりしてしまいますし、プランクトンや卵と一緒にすくってしまうと生態系へのダメージも大きなものになります。また、プランクトンより小さいプラスチックは、網目をすり抜けてしまいます。

リサイクルしているのでは?

日本では、プラスチックの分別回収が進んでいます。環境省が発表している数字では、リサイクル率は82%と世界的にみても高い数字になっています。((出典:環境省プラスチックを取り巻く国内外の状況/参考資料集2019年2月時点))

ところが、このリサイクルの内訳をみてみると、そのうちの57%は「熱回収」となっています。熱回収というのは、焼却の際に発生する熱をエネルギーとして利用することです。日本では、この熱回収に「サーマルリサイクル」と名前をつけて、リサイクルのひとつとして扱ってきました。ですが、国際的には熱回収はリサイクルとして認められていません。((サーマルリサイクルにつてはこの記事がわかりやすいです。→サーマルリサイクルとは・意味))

そうなると、純粋なリサイクル率は25%ということになりますが、そのうちの72%は輸出しています。国内でのリサイクル率は、総量の3%程度にしかなりません。((プラスチックリサイクルの難しさについてはこちらの記事がわかりやすい→世界でプラスチックのリサイクル率が低い5つの理由&日本の現状))

自分で簡単にプラごみを減らす方法3つ

すでにゴミになってしまったプラスチックを回収したりリサイクルしたりするのは、大切なことです。ですが、そもそも「プラごみを出さない」ようにするのが一番重要です。開きっぱなしの蛇口をしめる取り組みが必要なわけです。

とはいえ、プラスチックを全く使わないで生活することは、はっきり言って無理(笑)
途方に暮れてしまいそうですが、工夫すれば、簡単に生活に取り入れられることもたくさんあります。

エコバッグとマイボトルを持ち歩く

これはもう鉄板ですね。
とくにおすすめなのはマイボトルです。例えば、マイボトルを持ち歩いて1日1本のペットボトルを減らせば、1年で365本のゴミを削減できます。

おまけに、お財布にもやさしい!ペットボトルは税込み1本100〜150円くらい。仮に150円で計算すると、1ヶ月で4,500円、1年間で54,000円の節約になります。結構な金額!
コンビニやカフェでコーヒを買うときも、マイボトルに入れてもらうと10〜50円の割引なります。10円ってたいしたことない金額だと思うかもしれませんが、元の金額が100円なので((ローソンの場合))、10%引きとなかなかの割引率です。

いまは軽くてスリムな水筒もたくさん売っていますし、給水場所を教えてくれるアプリもあります。

キッチンのスポンジを自然素材のものに

これもかんたんにできます。わたしはいま、びわこふきんとたわしとヘチマスポンジを使っています。
詳しくはこちらの記事をぜひ。

いまあるものを大切につかう

要するに、過剰な消費を減らすということです。新しいものを購入する前に、いったん思いとどまって自問自答するだけ。

「これは本当に必要?」「心から欲しいもの?」「いまあるもので代用できない?」「長く使える?」「修理できる?」「ゴミになるときはどうなる?」

そうすると、私の場合、約半分くらいは「買わなくていい」という結果になります。お店もネットもSNSも買わせるテクニックが満載です。自らの意思で選んだように錯覚しますが、実際はテクニックに乗せられていたということも多々あります。

また、「絶対に必要」と思っていたものが、なくしてみたら意外とそうでもなかったということも結構ありました。

まとめ

いかがだったでしょうか?
個人的には、プラごみ問題は想像よりも深刻な状況だけれど、そのわりには、あまり周知されていないという印象です。

プラスチックを使わない生活は長いあいだ体に染み付いた習慣を変えることになるので、最初はたいへんだと感じるかもしれません。経済的な状況や生活環境にも左右されます。
ただ、制限があるなかでどうやるかを工夫するのは、やってみると楽しいものです。変化を楽しみつつ、完璧を求めず、できることを取り入れられたらいいと思います。

参考資料

脱プラ、プラスチックフリー生活に興味があるなら、こちらの記事もどうぞ。


About

花咲マリサ
イラストレーター、フラダンス講師。
このブログでは、街中で見かけたスタイルのある人や、日々考えたこと、読んだ本、フラのことについてイラストでご紹介しています。
ゆるーく「脱プラスチック」「ごみゼロ」生活を心がけています。日々の試行錯誤の記録。
ストイックでないミニマリストになりたいです。
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