映画『2040 地球再生のビジョン』【感想・レビュー】
『2040 地球再生のビジョン』作品情報・概要
2025年1月より公開の『2040 地球再生のビジョン』は、オーストラリアのデイモン・ガモー監督によるドキュメンタリー映画です。
監督の前作『あまくない砂糖の話』が面白かったのと、いまわたしが一番関心のある気候変動問題を取り扱った作品ということで、公開を楽しみにしていました。
結果、とってもよかったです!
いろんな人に見てほしい!
これまでの環境系ドキュメンタリーは「いま、こんな大変なことになっているんです!このままだとどうなるか?(ディストピアまっしぐら!)」というニュアンスの作品が多かったのですが、この作品は「解決策」にフォーカスし、希望を持って未来を描いているところが、他と違います。
「ベルベット、君に暮らしてほしい未来を描くよ」
4歳の娘を持つオーストラリアの映画監督デイモン・ガモーは、娘たちの世代には希望を持てる未来に生きてほしいと願い、もし悪化する地球環境を再生できるようなアイデアや解決策が今後急速に世界中に広がれば、娘が大人になる2040年にはどんな未来が訪れるだろう?と、解決策の実行者や専門家に会うため世界11ヶ国を巡る旅に出る。持続可能な社会を目指す理想的な経済モデル「ドーナツ経済学」や、バングラデシュでは自家用の太陽光発電システムをつなぎ電気を取り引きし、シェアするマイクログリットの実践と恩恵を目にし、オーストラリアではリジェネラティブ(再生型)農業や海藻で海洋環境を改善させる海洋パーマカルチャーを学ぶ。言語学者でローカリゼーション運動のパイオニアであるヘレナ・ノーバーグ=ホッジの「現実に目を向ければ、いたるところに驚異的な希望の光が見えるはず」という言葉に勇気づけられ、道中には約100人の子どもたちに理想の未来についてインタビュー。CGやポップな映像を交え、どのように地球を再生させることができるか、ワクワクするような未来予想図を描く。
監督:デイモン・ガモー(『あまくない砂糖の話』2014)
配給:ユナイテッドピープル 後援:オーストラリア大使館
2019年/オーストラリア/92分/ドキュメンタリー
ユナイテッドピープル公式WEBサイト
いまある最良の解決策だけで未来を描く
オーストラリアで、妻のゾーイさんと娘のベルベットちゃんと幸せに暮らすガモー監督。
でも、急速に悪化する環境問題により、ベルベットちゃんが大きくなったときのことが心配でたまりません。
この作品が制作された2019年、ベルベットちゃんは4歳。
彼女が25歳になる2040年、地球はどうなっているのだろう?問題だけでなく、解決策に焦点を当てた話をしてあげたい!
そんな想いから、取材を始めていきます。
監督は、作品を作るにあたり、ひとつのルールを設けます。
それは、「いまある最良の解決策だけで未来を描く」こと。
つまり「いまはまだ研究段階だけど、そのうち実用化される予定(仮)」みたいな技術は扱っていません。
とにかく「いま」がスタート地点なのがいいなと思いました!
面白く伝えるための工夫がたくさん
紹介されていた解決策はこんな感じ。
- 自家用の太陽光発電を使ったエネルギーの分散・自給自足システム。
- 土壌を修復し、自然環境の回復につなげる、再生型の農業
- クリーンエネルギーを使った自動運転車とシェアライドを普及することで、渋滞の緩和と駐車場を減らすことができる。
- 砂漠化した海を海藻の養殖によって緑化することで、海洋環境と食糧不足問題を解決する仕組み
- 意識的に資源を使うようになる、資源の利用状況を可視化するシステム
- 女子への教育やエンパワーメント(能力の開花や権限の付与)と家族計画
こうして文字で一覧にすると一見難しそうなテーマも、CGを使ったPOPで楽しい映像や、専門家たちの話を通じてわかりやすく、ワクワクするような形で描かれていました。
ほかにも、「そもそも気候変動問題ってなんだっけ?いま地球に何がおきてるの?」という前提知識について、地球を家に見立てて説明するなど、面白く伝えるための工夫がたくさんありました。
環境問題ってどうしても複雑で難しくなりがちなので、こういう工夫って本当に大事だと思います。
見終わったら行動したくなる
現状や問題はしっかり把握しつつ、行動したくなるアイデアをどんどん見せてくれるところがとてもよかったです。
「未来って、まだまだ良くできるんだ!」と勇気づけられる作品でした。
環境問題に興味がある人はもちろん、子どもや次世代のために何かしたいと思っている人にもぴったりの映画です。
見終わったら、きっと「2040年の未来を変えるために、わたしも何かできるかも」と行動したくなるはずです。
もっと知りたいと思ったときにおすすめの本
映画内に専門家として登場した方々の著作。
特にこちらの「ドローダウン」はオールカラーの写真も美しくておすすめです。